2006-12-16

【天声人語】2006年12月15日(金曜日)付

【天声人語】2006年12月15日(金曜日)付 ここから広告です

 街角に救世軍の社会鍋が立ち、人は時に立ち止まり、また立ち止まらずに行き交う。師走・極月も半ばまで来た。この一年を、住友生命が募集した「創作四字熟語」を見ながら顧みる。

 耐震偽装での証人喚問という重苦しい「住人怒色(じゅうにんどいろ)」で年があけ たが、2月にはトリノ五輪で「銀盤反舞(ぎんばんそるまい)」が見られた。3月には、王ジャパンがWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で世界一 に輝く「結果王来(けっかおうらい)」があり、夏の高校野球では「投姿端麗(とうしたんれい)」ありと、スポーツ界では明るい話題が幾つか続いた。

 秋には政権が交代し、「美治麗国(びじれいこく)」をうたう「晋総開店(しんそう かいてん)」があった。全国の高校に「逸修科目(いっしゅうかもく)」が広まっていたことが判明し、今は「いざなぎ」を超えるというが実感の伴わない「感 無景気(かんむけいき)」の中にある。

 これらの作品に誘われて、最近の問題について、もどきを考えてみた。やらせのタウンミーティングは、いわば政府による「自作偽演(じさくぎえん)」だ。これでは、ものごとが「官求事態(かんきゅうじたい)」や「官求自在(かんきゅうじざい)」にされかねない。

 「岸回生風(きしかいせいふう)」の気配も漂う安倍首相は、官房長官時代の責任をとって報酬の一部を返納するという。しかし、小泉政権が掲げた直接対話について世論誘導の疑いが指摘されたことは深刻だ。前首相は、教育改革などで改めて本当の対話を試みてはどうか。

 列島の北から南まで、知事の逮捕が相次いだ。誰にでも、「慢心創痍(まんしんそうい)」や「思考錯誤(しこうさくご)」に陥りかねない時はあるとしても、これでは「地方自沈(ちほうじちん)」だ。残る半月に、心が浮き立つようなことが一つでも多くあるようにと念じたい。

*****************************
参考:
http://coffeejp.com/blog/index.php/106800/action_viewspace_itemid_8496.html